学校建築・福祉施設・オフィス・工場をはじめとした設計実績が豊富な建築家・吉田明弘の建築に対する考え方をお伝えしていきます。
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国宝級の路地裏
文京区本郷にある有名な路地裏である。「路地裏」は私の建築設計上のテーマでもある。なぜなら、建築基準法や消防法、区画整理等などによって失われた大切な何かがそこにはあるからだ。
ここには私は日々考えている建築あるべき姿「その場所を無くてはならないものにする何か」が完璧な形でいとも簡単に実現している。
現代都市の陰湿な鉄扉の連なりなどどこにも無い。路地裏には暖かい人と人のコミュニティ(人情と言うべき)が息づいている。通風のために全開にされた玄関にはスダレが下がり、時とともに味が出た下見板張りの黒い壁、錆びたトタン貼りの壁、井戸端会議のための井戸、玄関前に積み上げられたすばらしい鉢植え植栽、出窓状の木製バルコニー、無造作な印象の樋、大谷石の擁壁に挟まれた幽霊の出そうな路地などなど、その魅力の全てがここにある。まさに「国宝級」なのである。
2012年8月10日金曜日
©2012- yoshida design workshop